【またもおきた排ガス&燃費不正】日野自動車の不正はなぜ起こったのか?
『ここをチェック』
★他社製品にもおよんだ影響
★共同出資会社CJPTを除名
★不正の根本原因はパワハラにあり
自分たちの都合のいいデータを公表した
21世紀初頭にはフォルクスワーゲンのディーゼルゲート事件、三菱ふそうと三菱自動車のリコール隠し事件、日産カルロス・ゴーンの金融商品取引法違反など、自動車産業に関係する不正事案が発生したことは記憶に新しいだろう。こうした不正事案の発生は落ちついたものかと思われたが、今度はトラック&バス業界で事件が起きた。
2022年3月に行った日野自動車の記者会見では、3種のエンジンに不正が行われていたことが発覚したと明らかにした。不正の内容は排ガスの清浄化と燃費に関するもので、排ガスの清浄化については、実際はマフラーの経年変化で清浄化が鈍るところを試験ではマフラーを交換して行っていたという。燃費に関しては、アイドリング時の燃費を偽ったり、数回の試験のうちでもっともいい数値を使用するなど、不正が故意であることは明らかだった。
不正が行われたエンジンは日野自動車の製品だけではなく、いすゞと日野自動車の合弁会社であるジェイ・バスが製造する大型観光バス、中型観光バス、大型路線バス、大型路線ハイブリッド連節バスなどにも採用されているため、これらの製品の出荷を停止。建設機械メーカーのコベルコ建機も一部機種の新規受注を停止したと報道されている。
日野自動車の筆頭株主はトヨタ自動車である。そのトヨタと日野、そしていすゞ自動車が共同出資して発足したのがCJPT(Commercial Japan Partnership Technologies)である。CJPTは2021年春に発足。商用車向けの電動化や環境技術、自動運転、シェアリング、コネクテッドサービスなどを企画することを目的としている。当初は3社でスタートしたが、のちにスズキ、デンソー、ヤマハなどが参入した。しかし、CJPTは2022年8月24日に日野自動車はCJPTを除名。CJPT除名についてトヨタ自動車の豊田章男社長は以下のコメントを発表した。
「今回日野が起こした認証試験不正は、お客様をはじめ全てのステークホルダーの信頼を大きく損なうものであり、日野の親会社としても、株主としても、極めて残念に思います。長期間に亘りエンジン認証における不正を続けてきた日野は、550万人の仲間として認めていただけない状況にあります。CJPTは日本のCASE技術をベースに、みんなで未来をつくるプロジェクトです。現状では日野がいることで皆様にご迷惑をおかけしてしまうと考え、CJPTから日野を除名することが適当であると判断し、関係各社とも協議のうえ、今回の結論に至りました。パートナーの皆様とは引き続き、輸送業が抱える課題の解決や、カーボンニュートラル社会の実現に貢献することを目指して、プロジェクトを進めてまいります。」
日野自動車が8月2日に発表した調査報告書のなかで、不正事案が発生したことの根底にある原因が上司のパワハラにあると明記している。パワハラを恐れるあまり社員がおかしいと言えない社内環境が今回の不正事案が発生したひとつの原因とし、8月30日には「すべてのハラスメント行為を断固として許さない」という強い決意と覚悟を持って「パワハラゼロ活動」を立ち上げたと発表した。
2023年4月、新車の認証手続きにおいてダイハツの不正が発覚し、大きなニュースとなったことは記憶に新しい。最初は東南アジア向けの新型車だけが対象となっていたが、その1カ月後に国内で販売している2車種についても不正があったと発表した。トヨタにOEM供給しているクルマもあったから、大きなニュースになっている。一時は新車の出荷停止にまで追い込まれた。この不祥事は、開発スケジュール重視の体質が大きく影響していると言えるだろう。再発防止のために改革が必要だ。
■2021年の最終赤字が847億円と過去最高になった日野自動車。今後のダカールラリーへの参戦などがどうなるか? すべてはまだ霧の中である
例題/日産リバイバルプランで売却された東京都内に存在した自動車工場は?
①武蔵野工場 ②村山工場 ③田無工場 ④秋川工場(正解=②)