【脱炭素にむけて進む電池の開発と代替燃料】持続的社会を手に入れるためのさまざまなアプローチ

『ここをチェック』
★バッテリーの性能がEVの性能を左右する
★期待が高まる全固体電池
★水素やバイオ燃料などにも期待

EVのバッテリーはガソリンエンジン車の燃料そのもの

世界中のクルマがEVに向かって行くなか、その行く先を決める大きな要素のひとつがバッテリーである。各自動車メーカーはいかに高性能のバッテリーを手に入れるか? に注力している。EVのバッテリーはガソリンエンジン車のガソリンタンクであると同時に、ガソリンそのものであるからだ。

駆動用バッテリーには多くの性能が求められる。まず第一に重要視されるのが安全性である。バッテリー火災は非常に消火がしづらいため、発火しにくい構造とする必要がある。バッテリーそのものを発火しにくくするのはもちろんだが、バッテリー以外の部分が火元でない場合もバッテリーが燃えないようにすることは非常に重要である。

 

次に求められるのは電池容量である。電池容量が多くなれば航続距離を伸ばすことができるだけでなく、高性能にすることが可能だ。加速をよくするには当然多くのエネルギーが必要なのは明らかだ。ただし、単純に電池容量を多くするのでは意味はない。現状のまま電池容量をアップするのは重量増にもつながる。大切なのは重量エネルギー密度で、1kgあたり何Whのエネルギーを出力できるかに掛かっている。日産リーフのリチウムイオン電池の重量エネルギー密度は224Wh/kgと言われている。ガソリンの12000Wh/kgと言われるので、いかにリチウムイオン電池の重量エネルギー密度が低いかがわかる。

 

ガソリンにしろ軽油にしろ給油にかかる時間は長くて数分程度だが、EVの充電はそれなりに長時間が必要となってくる。これを解決するにはバッテリー側の電気の受け入れ体制を整えるとともに、充電器の高性能化が必要となってくる。また、単純に電気を入れるだけではなく、どうやって入れるか? というソフトウエアの部分も重要だ。アメリカのテスラやドイツのポルシェなどは専用の充電器(※①)を開発し、より早い急速充電に対応している。

補足情報

①専用の充電器

日本における急速充電器はCHAdeMOと言われる規格で統一されている。このため、輸入EVはCHAdeMOに対応するように仕様変更しているのだが、テスラやポルシェは独自の専用充電器も使える設定となっている。テスラの専用充電器はスーパーチャージャーと呼ばれ15分間で最大275km相当分を充電が可能。ポルシェはターボチャージャーという名称で10分ほどの充電で約100 km分の走行相当分の充電が可能と謳っている。

こうしたなかで期待されているのが全固体電池と言われるものだ。現在のリチウムイオン電池は、正負両極材と電解液で構成されているが全固体電池は電解液を固体に置き換えたもの。全固体電池にすることで、安全性の向上、容量のアップ、充電時間の短縮が可能になるということで、この電池の完成が今後のEVの行く末を決める大きなポイントになるともいわれている。

 

全固体電池の開発については各社が躍起になっているところ。トヨタは2008年に電池研究部を設立し、全固体電池など、次世代電池の研究を開始。日産は2022年4月に2028年度の実用化を目指して研究開発を行っている全固体電池の積層ラミネートセルを試作生産する設備(※②)を公開。ホンダは2024年には試作量産品を作ることを目標としている。海外のメーカーやサプライヤーも全固体電池の開発には力を注いでおり、全固体電池の登場がEVの……いやモータリゼイションを大きく変換させるのは間違いないこととなるだろう。

補足情報

②積層ラミネートセルを試作生産する設備

日産のリーフに搭載している電池は、れとると食品のパックのようなラミネートパックに収められている。日産が開発している全固体電池も同様の構造を持つタイプで、その試作生産はすでに始まっている。試作生産ラインは横須賀市にある総合研究所内にある。この設備を公開した際、全固体電池のコストは2028年度に1kWhあたり75ドル、さらにその後はEVがガソリン車と同等のコストレベルとなる65ドルまで低減可能なポテンシャルがあると発表された。

EVの普及促進は脱炭素が目的。しかし脱炭素についてはEVの普及だけが手段ではない。EVを走らせるためには発電が必要で、我が国の場合は現状でも真夏や真冬に節電要請が出るほどの電力不足である。このため、EVだけに頼るわけにはいかない。トヨタはミライで水素FCVを実現したが、さらなる進化として水素を燃焼させる水素エンジン車を開発するべくスーパー耐久レースに水素エンジン車を参戦させている。水素エンジンというと非常に新しいエンジンだと思われがちだが、BMWは2000年代初頭には750hLという水素とガソリンを切り替えて燃焼させることが可能なバイフューエルモデルを実用化。マツダも2004年に水素ロータリーエンジンの開発車両を公開している。そのマツダは次世代バイオディーゼル燃料「サステオ」を使用するマツダ2でスーパー耐久レースに参戦。EVのみではない脱炭素世界を模索している。

 

■トヨタbZ4Xのリチウムイオンバッテリーは床下一面に敷き詰められている

 

■強固なケースに収められる日産リーフのラミネートパック型リチウムイオンバッテリー

 

 

■左が従来タイプのリチウムイオンバッテリー。右が全固体電池

 

 

■マツダが開発した水素ロータリーエンジン。水素をいかに貯蔵するかが大きな課題であった

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