正式名称（日本語表記での）「ＦＩＡフォーミュラワン世界選手権」、略称Ｆ１はＦＩＡが主催するオープンホイールレースの頂点カテゴリーだ。世界各国を転戦し、毎戦結果に応じたポイント（※①）がチームとドライバーに配分され、年間の総得点により争う。フォーミュラとは「規定」を意味し、その名のとおり厳格なレギュレーションの下に運営される。

世界選手権としてのＦ１が始まったのは１９５０年のこと。１９０６年にフランスで初めてのグランプリが開催されたのを皮切りに各地でレースが行なわれるようになり、１９４６年にＦＩＡが細かい規則を定めて「フォーミュラＡ」が誕生。これが改称されたのがＦ１である。
当初は自然吸気エンジンは４・５ℓ、過給機付きエンジンは１・５ℓという排気量で、アルファロメオとフェラーリ、マセラティの３メーカーによる争いだった。50年代後半には「プライベーター」が参戦し、’60年代に入ると葉巻型のマシンへと進化。’60年代後半には現代のＦ１のようなウイングが備わり、空力が重視された。’70年代以降はマシンの開発競争が激化し、’80年代のアイルトン・セナ、アラン・プロストの時代に全盛期を迎えた。
１９９４年のアイルトン・セナ選手の死亡事故をきっかけに、Ｆ１はスピードを抑制する方向にシフト。その後は、長らく続いた世界的な経済の低迷もあって開発は制限されることに。また環境への配慮ということもあり、２０１４年からはそれまでの２・４ℓのＶ８自然吸気エンジンからＶ ６ の１・６ ℓ ターボ（※②）エンジンに改められている。

２０２０年シーズンはＦ１史上最多となる22戦が予定されていたが、新型コロナウイルスの世界的まん延により、原稿執筆時点で、アジア、オセアニア、中東などでのグランプリは中止。欧州のみ13戦が行われる予定。また２０２１年に予定されていた大々的なレギュレーションの改変も２０２２年に先送りとなった。

迎えた2022年。車両規定は大きく変更された。従来大きく規制されてきた、空力面のデザインに自由度が与えられ、グラウンドエフェクトカーと言われる車体が採用されている。グラウンドエフェクトカーとは、車体下部と路面との間の空気の流れを利用してダウンフォースを得るもの。1970年代後半から1980年代前半に主流のデザイン手法となったが、事故の原因となるとして規制されてきた。それが近年の技術進歩により安全性が確保されたとしてふたたび採用できるようになったというわけである。一方でこのグラウンドエフェクトカーの採用によって、ポーパシングと呼ばれる激しい縦揺れが起きているということで、ポーパシング対策のためのレギュレーション変更も検討されているという。また、長年にわたり13インチと小径だったホイールは18インチへと一気に大径化された。重いホイール、少ない空気量はF1の世界ではさまざまな問題を生むと言われている。

■F1が始まって以来参戦を続けている唯一のチームがスクーデリア・フェラーリ