【WEC(FIA世界耐久選手権)】2021年からはふたたび年をまたがないシーズンに変更

『ここをチェック』
★シリーズにル・マン24時間レースを含む第5の世界選手権
★コロナウイルスの影響でル・マン24時間を8月に開催
★2021年から新しい車両レギュレーションを採用

ル・マン24時間レースが9月開催に変更

2012年、F1、WRC、WTCC、FIA-G T(現在は存在せず、ラリークロス世界選手権がある)に続く第5の世界選手権シリーズとして始まったのが、FIA世界耐久選手権(FIA World Endurance Championship)。WECと略すことが多く、ダブリュー・イー・シー、もしくはウェックと呼ぶ。
じつは同様のレースは1950年代から行われていて、紆余曲折しつつこのWECに集約された。1980年代には同じWECの名称を使うレースシリーズがあり、日本ラウンドは1982年~1985年まで富士スピードウェイで開催。1985年のレースでは、星野一義、松本恵二、萩原光の3選手が優勝し、日本人として初の世界選手権優勝ドライバーとなった。
WECは2019年から大幅に変貌した。レースシーズンが年をまたがるようになり、9月にシルバーストーンで開幕し、6月のル・マン24時間レース(※①)が最終戦となる……予定だったのだが、新型コロナウイルスまん延の影響でそのスケジュールは大きく変更となった。2019-2020シーズンは第1戦・シルバーストーン、第2戦富士スピードウェイ、第3戦・上海、第4戦・バーレーンと転戦、8月にスパ、9月にル・マン24時間、11月にバーレーンで最終戦となった。
2020-2021シーズンも実施される予定だったが、コロナウイルスをはじめとするさまざまな要素の影響によって開催が2021年にずれ込んだ。開幕戦は5月のスパで、伝統のル・マンは6月予定から8月開催に移動した。日本では富士スピードウェイで9月に予定されていたが、中止となった。代わって9月と11月にバーレーンでレースを行い、全6レース開催を達成している。

補足情報

①ル・マン24時間レース

1923年に始まった長い歴史を持つ耐久レース。パリ郊外のル・マン市にあるブガッティサーキットと公道とをつないだ全長約14㎞のサルトサーキットを舞台に、毎年夏至にもっとも近い土日を基本開催日として行われている。

また、この2019年からのスケジュールを実現するため、前年となる2018-2019シーズンは5月にベルギーのスパ・フランコルシャンで開幕し、第2戦がル・マン24時間、その後第3戦から6戦のスケジュールをこなし、第7戦でふたたびスパ、第8戦をシリーズ2回目のル・マンとしたため、1シーズンが1年以上となり「スーパーシーズン」と呼ばれた。
プロトタイプカー(※②)のLMP1がトップカテゴリーとなった最後のシーズンとなった2019-2020は第1戦、第2戦でトヨタ優勝でスタート、第3戦でレベリオン、第4戦はトヨタ、第5ではレベリオンが優勝したが、その後の第6戦から第8戦はトヨタが勝利。シーズンが終わってみれば100ポイント近くトヨタがリードしてのシリーズチャンピオンであった。

新たな車両規定であるハイパーカー(LMH)が導入された2021シリーズは、トヨタとグリッケンハウスがハイパーカーで参戦。アルピーヌは2020年モデルのノンハイブリッドLMP1で参戦した。7号車と8号車の2台体制で参加したトヨタは、両マシンともに3勝ずつ(つまり全戦でトヨタが優勝)した。

2022年のWEC開幕戦は、3月にアメリカのセブリングで行われた。ハイブリッド車に代表されるL M Hと呼ばれるハイパーカーの参加チームは2021年の3チームにプジョーが加わり、4チームとなっている。この年のマニファクチャラーズチャンピオンも、安定したレースを展開したトヨタだった。2023年は3月のセブリングを皮切りに、7戦が予定されている。第6戦が富士6時間、最終戦が11月のバーレーン8時間レースだ。フェラーリやポルシェ、キャデラックなどがWECにカムバックし、一気に華やかさを増している。6月のル・マン24時間100周年記念大会では復帰したフェラーリが優勝し、話題をまいた。

補足情報

②プロトタイプカー

かつては市販を前提とした試作段階のクルマをさしていたが、現在ではプロトタイプカーに対する解釈が変わってきている。絶対的に守られなくてはならないのは、フォーミュラカーのようにオープンホイールではなく、フェンダーが装着されていること。座席が2つある(事実上助手席には乗れないが)ことなど。

 

■2019年のル・マン24時間レースでは予選2位からスタートした8号車が優勝

 

 

■トヨタは2018年にル・マンで初優勝。2022年まで5連覇を成し遂げている。写真は2021年のもので、向かって左からマイク・コンウェイ、小林可夢偉、ホセ・マリア・ロペスの3ドライバー

参考情報 ここもチェック!

LMP1は廃止されハイパーカーが開始

WECで大きな問題となっていたのが、ワークス参戦の減少だ。一時期はトヨタだけになり、ワークス同士のレベルの高い激しいトップ争いが見られなくなった。そこで新たに設定されたのが、LMHと呼ばれる「ハイパーカー」というカテゴリーだ。レーシングカーとしてのパフォーマンスはLMP1と同等だが、サーキット走行に特化したLMP1の4分の1程度の車両コストでシーズンを戦えるように考えられている。ハイパーカーは、サーキットだけでなく公道走行も考慮した高性能スポーツカーと位置付けられているのだ。将来的にはロードバージョンの発売も視野に入れている。2021シーズンはトヨタがTS050ハイブリッドの後継マシンとなるGR010ハイブリッドを送り出し、アルピーヌとグリッケンハウスの2チームも名乗りをあげた。2022年にはプジョーがカムバックしてきた。2023年はフェラーリやポルシェ、キャデラックなどが戻ってきて、WECを盛り上げている。2024年にはランボルギーニも参戦を計画中だ。

■2019年の東京オートサロンで披露されたGRスーパースポーツ。トヨタはこのモデルをベースとしたレーシングカーでWECを戦っていくことになる

■2019年の東京オートサロンで披露されたGRスーパースポーツ。トヨタはこのモデルをベースとしたレーシングカーでWECを戦っていくことになる

クルマ豆知識

例題/次の日本人F1ドライバーのうちF1GPで一度も表彰台に登ったことのない選手は?
①佐藤琢磨 ②小林可夢偉 ③中嶋一貴 ④鈴木亜久里(正解=③)

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