【世界の自動車業界が震撼カルロス・ゴーン・ショック②】日産リバイバルプランの中身とは?・V字回復による復活とゴーン氏の逮捕
日産リバイバルプランの中身とは?
日産リバイバルプランは10月に発表されたが、その骨子が完成したのは、就任わずか3カ月後の7月初旬であった。日産リバイバルプランでは2000年度には黒字化、2002年度には営業利益率の4・5%オーバーを目標としていた。
それを実現するためにはさまざまなアプローチが行われた。なかでも有名なのが、工場の閉鎖である。2001年3月を予定としていたのが、東京の村山工場③、日産車体京都工場、愛知機械港工場の3工場、2002年3月を予定していたのが久里浜工場(ユニット工場)、九州ユニット工場の2工場で、いずれも予定通り閉鎖された。
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③村山工場
もともとはプリンス自動車の主力工場として1962年に操業を開始、日産との合併後もスカイラインなどを製造。高速周回路を含む広大なテストコースも有していた。閉鎖後は巨大なショッピングモールと宗教施設となっている。跡地の一角は「プリンスの丘公園」として保存。「スカイラインGT-R発祥の地」の碑がある。
また人的リストラも大々的に行われ、2000年、2001年の2年間で従業員数の14%の削減を行った。
生産効率の向上のためにプラットフォームの削減も行われ、1999年当時 24種あったプラットフォーム④は、2002年には15種に、2004年には12種に減らすという計画が発表された。
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④24種あったプラットフォーム
今はどこの自動車メーカーもプラットフォームの数を減らし、できる限り共有化を行うことで生産効率を上げているが、20世紀末の日産では24種ものプラットフォームを用意していた。専用プラットフォームといえば聞こえはいいが、そのコストは膨大となっていった。
日産リバイバルプランでもっとも削減されたのは購買、つまり部品調達費など
V字回復による復活とゴーン氏の逮捕
日産リバイバルプランは大成功し、2003年までに2兆円を超える借金を返済。日産は見事に再建された。
その功績の見返りとしてゴーン氏は多額の報酬を得ていた。有価証券報告書に記載(2019年5月修正分)されている額は平成28年度が37億4000万円、27年度が28億9400万円、29年度が28億6900万円と桁違いの報酬である。
5月に有価証券報告書(※⑤)が修正されたのは、当初の記載額とゴーン氏が受け取っていた額が異なるから。つまり、当初に過小申告したことになり、この行為が金融商品取引法違反にあたり、逮捕に至ったというわけだ(有価証券報告書の修正は逮捕後に行われている)。
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⑤有価証券報告書
事業年度ごとに作成が義務づけられている企業の経営状況などが記載された書類。金融庁への提出が義務だが、一般にも公開され、株式投資の資料などとなる。このため虚偽記載には罰則がある。
最初の逮捕は2018年11月19日で、その後12月10日に同容疑で再逮捕が行われた。12月21日には特別背任の容疑で3度目の逮捕、一度保釈となるが2019年4月4日にふたたび特別背任の容疑で4回目の逮捕が行われた。
2019年12月29日。世界を震撼させる出来事が起きる。カルロス・ゴーンが、プライベートジェットを使って日本から脱出、故郷であるレバノンに逃亡したのだ。ゴーン側としては、「日本では公正な裁判を受けることができない」というのが理由であった。この逃亡によって、15億円の保釈金は没収、逃亡費用は10~15億円とも言われ、総額25億から30億円をかけての逃亡劇となったと言われている。
2020年1月2日には日本政府が国際刑事警察機構(ICPO)にゴーン本人が国際手配を要請、同7日には妻のキャロルにも偽証罪で国際手配が要請され受理されたと報道されている。
この逃亡事件に関しては、関与したプライベートジェット運航会社のパイロットや客室乗務員、逃亡を手助けした元グリーンベレーの男などがすでに逮捕されている。
2020年8月にはレバノンのベイルート港で大規模な爆発事故が発生、ゴーン夫妻の自宅も大きな被害を受けたが、2名は無事だったと報道されている。
カルロス・ゴーンの目的は日本以外の国で、(彼の言うところの)公正な裁判を受け身の潔白を証明することであるだろうが、フランスの検察当局もルノーの資金流用について捜査に着手していることもあり、その実現は難しいものと思われる。
カルロス・ゴーン氏がいたからできたと言えるのが電気自動車のリーフ
ルノーとの橋渡しを行い、カルロス・ゴーン氏を招聘したのは当時の社長である塙義一氏
参考情報 ここもチェック!
ゴーン体勢だから生まれて来たクルマ
ゴーン体勢になって新たに登場したクルマもある。その最たるものが電気自動車のリーフだ。電気自動車の開発そのものはかなり昔から手がけられていたが、それを市販まで持っていったのはゴーン体勢ならではだろう。フランスでもEVが欲しいということもあり、リーフは積極的に開発されたモデルと言える。
また、スカイラインGT-Rは消滅したものの、新たにプレミアムスポーツカーとして日産GTRを投入。世界に通用するプレミアムスポーツという新たなジャンルへの参入も果たした。フェアレディZも一時ラインアップから消えていたが、復活をしている。フェアレディZはアメリカ市場では重要な意味を持つ車種で、無視はできないのだ。
①トヨタ・カムリ ②トヨタ・プリウスα ③レクサス・LX570 ④トヨタ・ハイラックス(正解=②)