快進社時代のダットに始まり、日産自動車になってからもダットサン乗用車およびダットサントラックを進化させてきた日産だが、自社のオリジナル車両に初めて車名を取り入れたのは１９５９年のことだった。
その後、日産の代表的なファミリーカーになるブルーバード(３１０型)である。当時、日産がライセンス生産していた英国の「オースチンＡ50ケンブリッジ」に倣い、トランクを独立させた現代的な３ボックススタイルを採用した。

この３１０型ブルーバードで手応えをつかんだ日産は、翌年にはセドリックやフェアレディ(デビュー時の表記はフェアレデー)を登場させている。１９６０年代半ばからはシルビアやサニーを発売。これらのスポーツモデルやファミリーカーは、モータリゼーション発展期の日本人の心をとらえ、スマッシュヒットを記録した。

日産陣営に加わるプリンス自動車は、合併前の１９５７年にブルーバードに先んじてスカイラインをデビューさせている。２代目でダウンサイジングを図り、その後はスポーティなセダンとして不動の地位を築くようになった。後にセドリックの姉妹車になるグロリアは、１９５９年に誕生している。

プリンス自動車は日産と合併した後の１９６８年、スカイラインをモデルチェンジし、日産ブランドで発売した。翌年にはスカイラインＧＴ-ＲとフェアレディＺという２つのスポーツモデルを投入。１９７０年には日産として初めての量産ＦＦ車、チェリーをラインアップに加えている。

■1969年2月に発売された初代スカイラインGT-R。数々のモータースポーツにも参戦し、勝利を収めた

■ブルーバードの下のエントリーカーとして1966年春に発売されたサニー。半年後に登場したカローラと熾烈な販売合戦を繰り広げた

■日本市場向けとしては1962年に発表されたフェアレディ。排気量を拡大しつつ1970年まで生産

■初代Zは1969年、ダットサン・フェアレディに代わり登場。写真はモンテカルロラリー出場車

■後々まで続く「スカイライン」の初代モデルがこれ、1957年発売のプリンススカイラインだ

ʼ80年代に入ると世界的な好景気の波に乗り、１９８２年発売のマーチを皮切りに、ʼ80 年代後半にはシルビア（Ｓ13型）、スカイライン（Ｒ32型）、フェアレディＺ（Ｚ32型）、セフィーロと、日産は次々にヒット作を生み出していく。
なかでも高級車シーマの登場は衝撃的で、「シーマ現象」という言葉までできたほどだ。
　 ʼ90年代目前の１９８９年11 月にはレクサス（セルシオ）のライバル、インフィニティＱ45も登場。日本中で空前の高級車ブームが巻き起こった。
そのほか面白い試みだったのが、マーチをベースにレトロなボディを与えた「パイクカー」のＢｅ-１、パオ、フィガロの３車種だ。
しかしそれら（除くパイクカー）もʼ90年代に入ると、ルーティンなモデルチェンジをこなすものの、どれも旧型ほどの人気は獲得できず、ルノー・ゴーン体制下で車種整理の憂き目にあった。
その代わりにティーダやノート、ムラーノといった新世代日産車が登場。現在はＥＶのリーフやシリーズハイブリッドのｅパワーなどに注目が集まっている。

２０２２年には日産リーフに続くＢＥＶとしてプレミアムＥＶのアリアを発売。矢継ぎ早に軽ＥＶのサクラも送り込む。ＥＶモデルの充実を図る一方、スポーツモデルのフェアレディＺを新型にし、ボディとパワーユニットを一新した。また、エクストレイルには可変圧縮システム採用の画期的なＶＣターボエンジンを搭載するなど、積極的に新型車を投入している。

■1988年に登場した初代シーマ。国産車離れしたデザインとパワーで一大ブームに

■1988年登場の5代目シルビア（型式名S13）は、歴代シルビアのなかで最多販売台数を記録

■リーフにはバッテリーを大型化し、航続距離を570km（JC08モード）としたe＋を追加

■三菱との協業によってうまれたデイズは2代目に進化。軽自動車を超えた質感を備える

■リーフに続くバッテリーEVとして投入されたアリア。リーフよりも高級指向で、プレミアム感あふれるモデルとなっている

■三菱との協業によって生まれたデイズ＆eKシリーズをベースに、バッテリーEV化したモデルの日産版がサクラとなる

■新型フェアレディZはZ34からRZ34という型式となった。Z34の部分が継承されたのは、社内での許可を取り付けるなどさまざまな思惑の上にとられた手段だという

■新型のエクストレイルには圧縮比を可変させるVCターボエンジンが採用された。EVに注力している日産だが、内燃機関の進化にも注目したい