【トヨタグループは2年連続1000万台超えを達成、ヒョンデが第3位に】世界の生産は頭打ち
『ここをチェック』
★2022年の年間販売台数はトヨタがトップ
★トヨタが2年連続1000万台超えを達成
★世界全体の販売台数は1%減の8262万台
新型コロナウイルスでの販売落ち込みに、半導体不足と円安の三重苦
2020年に世界中を襲った新型コロナウイルス感染症の影響は2023年になっても収まらない。当然、自動車の生産と販売に大きな打撃を与えたが、それに拍車をかけたのが2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻である。物流面や販売面で大きな打撃を与えただけでなく、自動車に不可欠な半導体の原材料などにはロシアやウクライナへの依存度が高いものが多いから供給も滞ってしまった。戦争によって使用される武器にも半導体はたくさん使われている。電子化が進み、半導体なしでは多くのものが動かない時代になったから、半導体不足は今後ますます深刻になっていくだろう。
2022年の世界全体の自動車販売台数は、1000年の8343万台から1%減の8262万台となっている。2020年の7766万台と比べると多いが、9000万台を超えていた2017年〜2019年と比較すると完全回復にはほど遠い状態だ。販売台数と生産台数のトップは、3年連続してトヨタグループである。トヨタ、ダイハツ、そして日野自動車の合計で1048万台を販売し、2年連続で1000万台の大台を超えた。新型コロナウイルスなどによって生産制約の影響も見られたが、アジア地域を中心に堅調な販売を記録。前年から0.1%減にとどめている。
第2位はドイツのフォルクスワーゲンだ。前年比7%減の826万台にとどまったのは、中国のロックダウン(都市封鎖)による影響が大きい。サプライチェーン(供給網)が混乱して思うように販売を伸ばせなかった。第3位には韓国のヒョンデ(現代自動車)が浮上している。685万台に迫る販売を記録し、616万台あまりを販売したルノー/日産/三菱グループを3位の座から落とした。2023年上半期の実績も上位3グループは変わらない。トヨタはグループ全体で540万台あまりを販売し、4年連続のトップとなっている。
2022年の5位はFCAとPSAを統合し、業界再編で誕生したステランティスだ。約600万台を販売し、売上高はBMWやメルセデス・ベンツグループを上回った。6位と7位はアメリカ勢だ。ビッグ3のゼネラルモーターズ(GM)とフォードで、GMはステランティスに迫る594万台まで業績を回復させた。アメリカ市場は2015年から2019年まで1700万台レベルを維持していたが、新型コロナウイルスが蔓延した2020年から落ち込み、2022年の新車販売台数は1400万台を切っている。これは2012年以降、もっとも少ない数字で、半導体不足による在庫不足や車両価格の高騰、金利上昇などが大きく影響した。ちなみにアメリカの自動車市場はリーマンショック(※①)後の2009年には1043万台にまで落ち込んだ。リーマンショック以前の2007年と同レベルまで業績を回復させるのに、5年もの期間が必要だった。新型コロナウイルス以上に、リーマンショックは大きな出来事だったのである。
日本のメーカーではホンダとスズキが上位10社に名を連ねた。スズキは販売台数を増やしたことに加え、為替の円安効果もあったから業績を大きく伸ばしている。2023年3月期には売上高が初めて4兆円を突破し、業績予想を上方修正するほど好調だ。ホンダも国内販売は低迷しているが、北米を中心に海外は堅調である。
補足情報
①リーマンショック
アメリカの投資銀行「リーマン・ブラザーズ」が2008年9月15日に破綻し、それが引き金となっての世界的金融危機および不況のこと。その後米国ビッグ3のクライスラーとGMが相次いで破綻。日本でも本田技研工業はかろうじて黒字に踏み留まったが、トヨタ自動車、日産自動車は巨額の赤字に転落した。
トランプ政権はアメリカ国内での生産を求めるような発言を繰り返していたが、バイデン政権となった現在も現状の変化はさほど発生していない。比較的安定していた為替レート(※②)だが、2022年には大きく円安に動き、一時は1ドル145円を超えた。輸出産業である自動車産業は円安の恩恵を受けるが、原材料費を始めエネルギー費などにはネガティブに働く。いずれにしろ急激な為替レートの変化は産業界への影響は大きい。
補足情報
②為替レート
2011年のドル円レートは年間平均で約79.8円。翌年の2012年も年間平均レートは約79.8円と超円高傾向が続いたが、2013年はいわゆるアベノミクスにより約97.6円と円安基調に。2015年には121円とかなり円安が高まった。2017年以降は小刻みに上下しつつも比較的落ち着いていたが、2022年には145円台を記録するなど近年にはあまり見られない円安傾向となった。
2020年から2021年に掛けては世界中の多くの自動車メーカーが電動化に向かって舵を切ることを宣言したことが印象的な出来事だった。とくに海外のメーカーが顕著で、ジャガー、メルセデス・ベンツ、ボルボ、ランドローバー、GM、フォードなどが2030年年あたりを目処に全車EV化という方針を打ち出してきている。そうしたなか、日本勢はホンダが2040年には全車をEVもしくはFCV(燃料電池車)とすることを宣言したものの、多くはEVとハイブリッドの2本柱での車種構成という方針だ。
EVの製造にはバッテリーの確保が必須で、各社がいかにバッテリーを確保していくかが今後の注目となる。自動車以外にもバッテリーを求める産業は数多く存在し、現存のバッテリー製造業者が有する工場だけでは自動車メーカーはEVを製造するために必要なバッテリーを手に入れることは不可能といわれており、バッテリーメーカーと協力しつつ独自のバッテリー工場を設立していく、バッテリーメーカーに積極投資をしていくことが求められている。
●2022年世界販売台数
■2018年に世界最多販売の座をフォードのピックアップトラックFシリーズに奪われたが、2019年はふたたびカローラが返り咲き、2020年も引き続きその座を継続、グローバル年間で140万7000台を販売した。2021年7月には累計5000万台販売という大記録を樹立した
参考情報 ここもチェック!
中国、インド、タイ、そしてウクラナイ、さまざまなカントリーリスク
日本メーカーの海外シフトが続くなか(次ページ参照)、それでも開発拠点やコア技術の生産はあくまで日本に軸足を置き続けるメーカーは多い。その理由の一つが「(日本以外の)カントリーリスク」だ。2012年9月には尖閣諸島の所属をめぐり中国各地で暴動が発生し、多くの日本車およびショールームが破壊される事件が起きた。また2011年にはタイで大洪水が発生。ホンダの組立工場など多くの日本企業に被害が出て、各メーカーが対応に追われたことは記憶に新しい。また同じくタイでは2014年5月20日に陸軍が戒厳令を発令した。
そして2020年には新型コロナウイルスがまん延。国をまたいでさまざまなことができなくなり、自動車産業も大きな影響を受けた。2021年には日本で半導体メーカーのルネサスエレクトロニクス那珂工場で火災が発生、世界的に不足している半導体不足下での主要メーカーが火災により生産停止に追い込まれたことでさらなる部品不足が発生、自動車メーカーが生産調整を行う事態となっている。
そしてさらに大きな事態となったのが、2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻である。この侵攻によって、原材料の不足や流通ルートの分断などが起きているが、それだけではなく多くの自動車メーカーがロシアから撤退を決めた。今まで多額の投資をして開発してきたロシア市場の喪失は、自動車メーカーに大きな損失を与えたのは間違いない。
例題/順次切り替わりが進む燃費の計測方法は?
①WTCC ②WWCC ③WBST ④WLTC(正解=④)