【トヨタグループのみ1000万台超え、スズキは脅威の12.9%増】世界の販売台数は微増

『ここをチェック』
★2021年の年間販売台数トップはトヨタ
★トヨタのみ1000万台を達成
★世界全体の販売台数は2020年比7.4%増

新型コロナウイルスの影響が収まらないうちに起きた急激な円安

2021年になっても新型コロナウイルスの影響は自動車販売に大きな影響を及ぼしたが、それにさらに拍車を掛けたのが2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻である。物流面や販売面での大きな打撃があるのはもちろん、一部の半導体原材料などにはロシアやウクライナへの依存度が高いものがある。さらには戦争によって使用される武器類に多くの半導体が流れていることも影響し、半導体不足はますます深刻になってきている。

 

2021年の世界自動車販売台数は8343万台と、2021年の7766万台に比べると増えてはいるものの、9000万台オーバーを記録していた2019年と比べるとまだまだ回復したとは言い切れないのが現状である。販売台数のトップは昨年に引き続きトヨタグループ(トヨタ、ダイハツ、日野)で1050万台と、唯一の1000万台超えとなった。

フォルクスワーゲンは888万台で2位、3位はルノー・日産・三菱グループで777万台、4位はヒョンデ(2022年よりグローバルでヒュンダイからヒョンデに発音、および表記を変更)で667万台であった。10位までにランクインしたメーカーのうち2020年からプラスになったのはトヨタの10.1%、

ルノー・日産・三菱グループの0.5%、ヒョンデの5.0%、ステランティスの3.3%、スズキの12.9%で残りはマイナス。スズキの12.9%という伸びはこの次期においては驚異的な伸び率と言える。

2021年初頭には業界再編の大きな動きがあった。フィアットやクライスラー、アルファロメオなどのブランドを有したFCAとプジョー、シトロエン、DSオートモビルズなどを有したPSAが統合、新たに「ステランティス」が誕生した。ステランティスの扱いブランドは、アバルト、アルファロメオ、クライスラー、シトロエン、ダッジ、DSオートモビルズ、フィアット、ジープ、ランチア、マセラティ、オペル、プジョー、ラム、ヴォクスホールで14ブランドにもなる。また、2021年12月にはダイムラーがトラック&バス部門を独立させ、2022年2月には乗用車系ブランドを扱う部門をメルセデス・ベンツグループとして発足させている。

アメリカ市場は2015年から2019年まで1700万台レベルを維持していたが2020年は1459万台まで落ち込んだ。リーマンショック(※①)後の2009年には1043万台にまで落ち込み、リーマンショック以前となる2007年と同レベルになるまでは2014年まで5年もの期間が必要だったことを考えれば、いかにリーマンショックが大きな出来事だったかがわかるはずだ。

補足情報

①リーマンショック

アメリカの投資銀行「リーマン・ブラザーズ」が2008年9月15日に破綻し、それが引き金となっての世界的金融危機および不況のこと。その後米国ビッグ3のクライスラーとGMが相次いで破綻。日本でも本田技研工業はかろうじて黒字に踏み留まったが、トヨタ自動車、日産自動車は巨額の赤字に転落した。

トランプ政権はアメリカ国内での生産を求めるような発言を繰り返していたが、バイデン政権となった現在も現状の変化はさほど発生していない。比較的安定していた為替レート(※②)だが、2022年には大きく円安に動き、一時は1ドル145円を超えた。輸出産業である自動車産業は円安の恩恵を受けるが、原材料費を始めエネルギー費などにはネガティブに働く。いずれにしろ急激な為替レートの変化は産業界への影響は大きい。

補足情報

②為替レート

2011年のドル円レートは年間平均で約79.8円。翌年の2012年も年間平均レートは約79.8円と超円高傾向が続いたが、2013年はいわゆるアベノミクスにより約97.6円と円安基調に。2015年には121円とかなり円安が高まった。2017年以降は小刻みに上下しつつも比較的落ち着いていたが、2022年には145円台を記録するなど近年にはあまり見られない円安傾向となった。

2020年から2021年に掛けては世界中の多くの自動車メーカーが電動化に向かって舵を切ることを宣言したことが印象的な出来事だった。とくに海外のメーカーが顕著で、ジャガー、メルセデス・ベンツ、ボルボ、ランドローバー、GM、フォードなどが2030年年あたりを目処に全車EV化という方針を打ち出してきている。そうしたなか、日本勢はホンダが2040年には全車をEVもしくはFCV(燃料電池車)とすることを宣言したものの、多くはEVとハイブリッドの2本柱での車種構成という方針だ。
EVの製造にはバッテリーの確保が必須で、各社がいかにバッテリーを確保していくかが今後の注目となる。自動車以外にもバッテリーを求める産業は数多く存在し、現存のバッテリー製造業者が有する工場だけでは自動車メーカーはEVを製造するために必要なバッテリーを手に入れることは不可能といわれており、バッテリーメーカーと協力しつつ独自のバッテリー工場を設立していく、バッテリーメーカーに積極投資をしていくことが求められている。

 

 

●2021年世界販売台数


■2018年に世界最多販売の座をフォードのピックアップトラックFシリーズに奪われたが、2019年はふたたびカローラが返り咲き、2020年も引き続きその座を継続、グローバル年間で140万7000台を販売した。2021年7月には累計5000万台販売という大記録を樹立した

 

 

 

 

参考情報 ここもチェック!

中国、インド、タイ、そしてウクラナイ、さまざまなカントリーリスク

日本メーカーの海外シフトが続くなか(次ページ参照)、それでも開発拠点やコア技術の生産はあくまで日本に軸足を置き続けるメーカーは多い。その理由の一つが「(日本以外の)カントリーリスク」だ。2012年9月には尖閣諸島の所属をめぐり中国各地で暴動が発生し、多くの日本車およびショールームが破壊される事件が起きた。また2011年にはタイで大洪水が発生。ホンダの組立工場など多くの日本企業に被害が出て、各メーカーが対応に追われたことは記憶に新しい。また同じくタイでは2014年5月20日に陸軍が戒厳令を発令した。
そして2020年には新型コロナウイルスがまん延。国をまたいでさまざまなことができなくなり、自動車産業も大きな影響を受けた。2021年には日本で半導体メーカーのルネサスエレクトロニクス那珂工場で火災が発生、世界的に不足している半導体不足下での主要メーカーが火災により生産停止に追い込まれたことでさらなる部品不足が発生、自動車メーカーが生産調整を行う事態となっている。

そしてさらに大きな事態となったのが、2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻である。この侵攻によって、原材料の不足や流通ルートの分断などが起きているが、それだけではなく多くの自動車メーカーがロシアから撤退を決めた。今まで多額の投資をして開発してきたロシア市場の喪失は、自動車メーカーに大きな損失を与えたのは間違いない。

クルマ豆知識

例題/順次切り替わりが進む燃費の計測方法は?
①WTCC ②WWCC ③WBST ④WLTC(正解=④)

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