【ボディの構造と名称②】「モノコック構造」とはどういうものか?・バックボーン型という形式もある

「モノコック構造」とはどういうものか?

オフロード車などを除く現代の乗用車のほとんどが採用している「モノコック構造」についてさらに見てみよう。
モノコックボディは中空のボディパネルで構成され、シャシーとボディが一体で成形されている、フレームを持たないフレームレス構造のこと。軽量で高剛性という特徴を持っており、溶接ロボットかマルチスポット溶接機によって生産できるため、量産が容易でもある。

事故発生時はボディは必要に応じて変形することで運動エネルギーを吸収し、室内は変形の影響をほとんど受けないという大きなメリットがある。ただし、ある一定以上の事故を起こすと、モノコックボディは一体構造ゆえに修理が難しいというデメリットも。骨格にあたる部位が損傷を受けたり修復を受けたクルマのことを俗に事故車、正確には「修復歴車」と呼ぶ。

モノコック構造における各部の名称は左図のとおり。縦方向の基本となる「サイドメンバー」があり、骨格前方の左右をつないでいるのが「クロスメンバー」。そこにフロアパネルやルーフパネル、トランクフロアなどが溶接され、上下方向には基本的に3本の「ピラー」がある。
ちなみに自動車公正取引協議会の定義に基づく「修復歴車」とは、「左図①から⑧の骨格部位に損傷があるものまたは修復されているもの」のこと。⑨のラジエターコアサポートは 「交換されており、かつ隣接する骨格部位に凹み、曲がりまたはその修理跡があるもの」が、修復歴とされる。また、溶接ではなくネジ止めされているパネル類(ドアパネルやリアクォーターパネルなど)が損傷を受けて交換されたクルマは、正確には修復歴車にはあたらない。

モノコック構造における各部

①サイドメンバー
②クロスメンバー
③インサイドパネル
④ピラー
⑤ダッシュパネル
⑥ルーフパネル
⑦フロア
⑧トランクフロア
⑨ラジエターコアサポート

バックボーン型という形式もある

モノコック構造ではないフレーム構造が主流だった時代、「バックボーン型」というフレーム構造もしばしば採用された。
バックボーン型はクルマの前後軸間の中心線上に「背骨」を配し、エンジンやサスペンションをそれに取り付けるタイプ。はしご型フレーム(ラダーフレーム)よりも軽く簡潔で、ねじれに強く、ボディ形状に左右されずにサスペンションやドライブトレーンを自由に設計できるというメリットがある。しかし大きなフロアトンネルが室内スペースを邪魔するというデメリットもあるため、後には競技車両やスポーツカーに見られる程度になった。ちなみに、トヨタ2000GTのように前後サスペンション部分を二股に開いた「X型フレーム」も、バックボーン型に分類される。


写真は英国のライトウェイトスポーツ「ロータス・エラン」のバックボーン式フレーム。バックボーンとは"背骨"の意味

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修復歴車(事故車)の見分け方とは?

モノコックの骨格部分に損傷を受けたクルマのことを修復歴車と呼ぶわけだが、修復歴車であっても、中古車として普通に再販される場合がほとんど。
その場合は当然、通常の中古車とくらべて売却時の査定額も店頭での販売価格も低くなるわけだが、なかには修復歴があることを偽って「無事故車」として再販される中古車もなくはない。
そういった個体の見極め方は簡単ではないが、ボディサイドシルの下側を覗きこみ、そこにフレーム修正機で作業を受けたクルマに特有の「多数の爪痕のようなもの」があった場合、何らかの事故によりモノコックのフレーム修正を余儀なくされたクルマ、すなわち修復歴車である可能性が高い――と判断できる。
ただ、大手の中古車情報サイトに掲載されている物件や、第三者機関の鑑定を受けている物件であれば、さほど心配する必要はないというのも事実だ。

事故などで歪みが生じたボディを引き延ばして修正する治具をフレーム修正機と呼ぶが、モノコック時代ということで[ボディ修正装置]と呼ぶことが多い(写真はイメージです)

クルマ豆知識
日本のパーツメーカー/「小糸製作所」 ヘッドライトユニット、リアコンビランプなどのクルマの灯火類に関するパーツを幅広く生産。LEDヘッドライトを世界で初めて実用化したメーカーでもある

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