【各種オイルの基礎知識】規格を知って正しいオイル選びを

『ここをチェック』
★規格は数種類がある
★それぞれのオイルの役目を知る
★オイル管理は神経質になりすぎない

エンジンオイルの規格は複雑だ

エンジンオイルはエンジン内部の潤滑に加え、気密、密閉、冷却、清浄、防錆‥‥と、非常に多くの役目を持っている。エンジンオイルの規格といえば「10W-30」などと表記される粘度の規格が一番メジャーだろう。この表記はSAE(アメリカ自動車技術者協会)による分類方法である。10Wとは低温時の流動性を表したものだ。「W」はWinterを意味している。この数値が小さいほど低温での流動性がいい。つまり低い温度でも柔らかい特性を持っているオイルということだ。もう一方の「30」は高温粘度を表し、この数値が大きいほど高温時の油膜保持性能が高いことになる。

このほかにAPI規格というものがある。APIとはアメリカ石油協会(API)、SAE、アメリカ材料試験協会(ASTM)の3者が定める規格で、ガソリンエンジン用はS、ディーゼルエンジン用はCで始まる、ガソリンエンジン用のAPI規格は表のように分類されている。またAPI規格に省燃費性能をプラスした規格としてILSAC(日米自動車工業会で構成される潤滑油国際基準化および認定委員会)が定めた規格も存在する。さらに、日本独自の国産クリーンディーゼルエンジン用規格としてJASO規格というものも存在する。

国産の乗用クリーンディーゼル用に適合するオイルはDL-1(※①)という規格、GLV-1は低粘度省燃費ガソリンエンジンオイルの規格となっている。
エンジンオイルはオイルフィルターを通して濾過される。エンジンオイル交換時の初回にオイルフィルターを交換、以後は1回おき、つまり奇数回ごとにオイルフィルターの交換が推奨されていることが多い。また、オイル交換時にはドレンボルトのワッシャーは毎回交換が推奨されている。交換頻度についてはメーカー指定の頻度で十分。シビアコンディションと言われる過酷な使い方、使用場所については半分の距離、半分の期間となっていることが多い。

新しく発売される高性能オイルの多くは、粘度が低く設定されているものが多い。最新のエンジンは粘度の低いオイルを使うことで内部抵抗を減らし、高出力や省燃費をねらっているからにほかならない。高性能オイルだからといってすべてのエンジンにおいて高性能を発揮するわけではなく、古い年式のクルマにはその時代にあった粘度のオイルが必要だ。昔のクルマは、各部のクリアランスも大きく、高め(つまり硬め)のオイルとの相性がいいことも多い。また、長距離を走ってきたエンジンは各部のクリアランスがさらに大きくなっている。やみくもに最新のオイルを使うのではなく、その年代にあったオイルを使うことが大切だ。


■オイルの規格を知って、正しいオイル選びができるようになりたい

 

 

補足情報

①DL-1

硫酸灰分が0.6%以下で目の細かいDPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)に対応するオイル。リン分は0.10%以下。粘度は0W-30や5W-30のものが多く見られる

ATF、ギヤオイル、デフオイル

ATFはAutomatic Transmission Fluid(オートマチックトランスミッションフルード)の略で、ATの潤滑や冷却、清浄、防錆などを担当している。しかしながらもっとも大切な働きがAT内部で変速を行うための油圧制御などであるため、オイルではなくフルード(作動液)の名称が使われている。ATFにも規格があるが、基本的には純正品の指定されたATFしか使用しない。
ギヤオイルはMTのミッションの潤滑や冷却、清浄、防錆など、デフオイルはFRや4WDなど独立したデファレンシャルケースをもつものに使用する。一般的なFFはミッションケース内にデファレンシャル機構を内蔵するので、ギヤオイルやATFがその役目を兼ねている。ギヤオイルとデフオイルはGL-1〜GL-6の規格があり自動車用として実際に使われるのはGL-4もしくはGL-5で、一部でGL-6が使用されることもある。ギヤオイルにもエンジンオイルのように75W-90といった粘度表示が行われる。
ATFやギヤオイル、デフオイルについても交換時期はメーカー指定の頻度(※②)で問題ない。

 


■複雑な構造をしているATはフルード交換時にゴミなどが混入しないようにとくに気をつけて作業を行う必要がある

補足情報

②メーカー指定の頻度

ガソリンスタンドやカー用品店、またはディーラーでもオイル交換を早めに行うようにすすめるが、メーカー指定頻度で十分にマージンが確保されている。オイル交換を頻繁に行うことは廃油を多く発生させることにもなり、環境保護の観点からも避けるべき。

さまざなな作動油

ブレーキやパワステなどクルマにはさまざまな作動油が使われている。クラッチ付きのクルマはクラッチにも作動油が使われている。パワステオイルはATFを使っていることも多い。こうした作動油もグレードが高いものを使うことがいいと思いがちだがそうとは限らない。たとえばブレーキフルードの場合はDOTという規格が使われDOT3より、DOT4のほうが沸点が低く高い温度に対応するが、数が増えるほど吸湿性が上がり大気中の水分を取り込みやすい性質となる。フルード内に水分が多くなると沸点が下がる。このためDOT数が多いものは、湿度の低いときに交換するなど交換頻度を上げるなどの対処が必要となる。また、水分を含んだブレーキフルードは金属を腐食させるという性質も持つ。

クルマ豆知識

例題/電気自動車の急速充電のデメリットはなにか?
①バッテリーの劣化 ②加速性能の低下 ③タイヤ空気圧の減少 ④ヘッドライトの劣化(正解=①)

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