【企業対象の燃費規制が世界を動かす②】中国でもオリジナルの規制が始まっている・大きいクルマを売りたければエコカーも作れ

中国でもオリジナルの規制が始まっている

中国では独自のNEVと呼ばれる規格を作っている。New Energy Vehicleの略であるNEVは日本語では、新エネルギー車ということになる。
このNEVに含まれるのはEV(電気自動車)、FCV(燃料電池車)、PHV(プラグインハイブリッド)の3種で、充電機構をもたないハイブリッドは含まれていない。 中国はNEVの普及(※①)に向けてはかなり積極的だ。中国の都市部ではクルマを買うためにはまずはナンバープレートを取得しないとならない。このナンバープレート取得の倍率が800倍とも言われているが、NEVについては優遇するとしたのだ。しかし、蓋を開けてみるとNEVのナンバープレートを手に入れるのがこれまた大変になるほどの状況となった。とにかくクルマに乗りたい、だからエンジン車はあきらめてNEVにシフトすると考えた人は予想以上に多い。2019年の情報だが、NEVナンバーの待ち人数は44万人にもなり、最後尾の人がナンバーを手に入れられるのは9年後にあたる2028年だというのだから驚きである。

NEVを売るとその性能に対してメーカーはクレジットが与えられる。メーカーはそのクレジットを使って通常のエンジン車を製造できるシステムで、中国ではこれをCAFC規制と呼んでいる。クレジットが足りない場合は、クレジットが余っている他社からクレジットを買い取ることでエンジン車を製造できるが、当然コストは跳ね上がる。一方で、EVしか製造していないメーカーはクレジットが貯まっていくのでどんどん売ることができる。中国ではEVの売れ行きが好調なうえに、クレジットも売れるのでテスラなどのEVメーカーは利益がどんどん増える。中国のメーカーもEV中心で展開しているので、当然のごとく利益が膨らんで行くという構図ができあがっている。

補足情報

①NEVの普及

中国のNEVに対する力の入れ方はものすごいものだ。NEVの中心となるのは電気自動車で、中華系の自動車メーカーは次々と電気自動車を投入してきている。写真のモデルは2019年のバンコクモーターショーに出品されたMGの電気自動車ZSEV。かつてイギリスのブランドであったMGは今は上海汽車集団の傘下にあり、東南アジアを中心にシェアを拡大している。

 

■テスラのようにEV専売のメーカーはCAFEとは無関係にクルマを売れる

大きいクルマを売りたければエコカーも作れ

アメリカのCAFEはメーカーごとに掛かってくる規制のため、自動車業界に及ぼす影響は多大だ。利益の大きい高級車を売るためには、CAFEの規制をクリアできるようにするため利益は少ないエコカーを作らなくてはならないからだ。
そうなるとエコカーはできる限りコストダウンを図らないとならなくなる。自動車のように部品点数の多い工業製品は大量生産によるコストダウンは非常に有効なので、アライアンスを使った部品の共有化はもちろん、アライアンスの壁を越えて、さまざまな部品の共有化が有効になり、サプライヤーにも自由度が求められている。
また、現在はCAFEの対象となる自動車メーカーは一定以上の販売台数(生産台数)に限られているが、今後はその台数が引き下げられる可能性もある。少数のスポーツカー(※②)を売っているメーカーが対象になった場合、他メーカーや政府からクレジットを買う必要があり、より販売価格の上昇は避けられない。

さらに進めば、アライアンスの再構築や合併や吸収という事態も出てくる、非常に大きな出来事なのである。

補足情報

②少数のスポーツカー

CAFEはある程度のボリュームの台数を販売するメーカーを対象にしている。このため少数のスポーツカーを作ってるメーカーは対象外となっていたが、年々対象となる生産台数が引き下げられるとともにアライアンスとしてCAFEをクリアする必要もあり、ポルシェなどはフォルクスワーゲングループの一員としてCAFÉのクリアに乗り出すことを決定。高性能EV用電池の自社生産を目指し、数千万ユーロの投資を行うと伝えられている。
こうしたスポーツカーなどを全面的に排除してしまおうという考えではないところにアメリカの寛容さを感じるが、同時に富裕層からの突き上げを受けないようにしているという側面もある。メーカー側は売る台数をセーブしなければならないことに加え、規制台数が変わった場合は突然対象になってしまうのも懸念材料となる。


■電気自動車はインフラも重要。日産は米国で日本式充電器であるチャデモの実験を開始した

 


■電動化に関する技術はもちろん、希少金属の確保なども重要

 

 

参考情報 ここもチェック!

燃費の計測方法を世界で統一する

CAFE規制は世界中で採用が進みつつあり、日本でも採用が考えられている。その規制をスムーズに進めるために欠かせないのが燃費計測方法の統一。国によって燃費や排ガスの検査方法がまちまちだと、その国に合わせたチューニングが必要となり、クルマの開発スピードがダウンしてしまう。そこで使われるようになってきたのがWLTCモードと言われる計測方法。
どの国でも同じモードで計測された燃費が使われれば、チューニングするほう(メーカー)も、審査するほう(省庁)も手間はずいぶんと減る。
現在、日本もWLTCモードに移行中だが、最高時速が130㎞/hとなる、エキストラハイモードについては採用されていない。

■燃費向上のためのアプローチはさまざま。トヨタはオイルの開発まで行っている。

■燃費向上のためのアプローチはさまざま。トヨタはオイルの開発まで行っている。

クルマ豆知識

例題/2021年の自動車生産台数に大きく影響した部品不足は何が不足したか?
①半導体 ②タイヤ ③ピストンリング ④駆動用バッテリー(正解=①)

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