【ディーゼルエンジン②】欧州では急激に数が減りつつあるディーゼルエンジン・ディーゼルとターボは相性バッチリ
マツダは新型ディーゼルエンジンを市場投入
欧州でのディーゼルエンジン車の販売比率は1995年には約20%程度だった。が、その後は一気に右肩上がりとなり、10年後には50%を超えるまでに膨らんでいる。この時期のトレンドは、ディーゼルエンジンは二酸化炭素の排出量がガソリンエンジンより少ないから地球にやさしい、というものだった。また、日本では軽油が安いからという理由で、シェアを大きく拡大することに成功している。
しかし、次第にディーゼルエンジンに対する規制は厳しくなり、旧規制に対応していた古いディーゼルエンジン搭載車は都市部への乗り入れが禁じられるようになった。有害な煤(すす)や窒素酸化物などを低減する新規制に対応させるためには、さまざまな排ガス浄化・清浄装置の取り付けが必要となる。また、尿素SCRを使うディーゼルエンジンではアドブルーの定期的な補充も必要だ。製造コストとランニングは大幅に上がった。追い打ちをかけるように排ガスの不正問題が発覚したから、欧州ではディーゼルエンジン離れが急速に進んだ。
これに対し日本では、クリーンディーゼルに該当すれば税制面で優遇され、補助金の交付も行われるから人気が再燃している。2022年にはマツダが3.3ℓの直列6気筒直噴ディーゼルエンジンを開発し、CX-60に搭載してデビューさせた。3.3ℓのディーゼルエンジンにモーターを組み合わせたハイブリッド車も登場する。脱エンジンが進むなか、マツダはあえて新型のディーゼルエンジンを開発し、送り出した。今、マツダの英断と思惑に世界中のメーカーが目を向け、注目している。
■2020年に発表されたBMWの直列6気筒ディーゼルエンジン。48ボルト電源の直流バッテリーとモーターを組み合わせることによりハイブリッド化している
■マツダが2022年に新たに市場投入した直列6気筒のディーゼルエンジン。BMW同様に48V電源を使ったマイルドハイブリッド仕様も用意される
ディーゼルとターボは相性バッチリ
上記のマツダCX-5にしてもBMWのBluePerformanceにしても、採用しているディーゼルエンジンはただのディーゼルではなく、過給機とコモンレール式直噴技術を組み合わせた「直噴ディーゼルターボ」である。
ディーゼルエンジンというのは、ガソリンエンジン以上にターボとの相性が良い。ガソリンエンジンは最終圧縮比(過給圧×圧縮比)を上げすぎると点火プラグで点火する前に自然着火してしまい、異常燃焼の原因になってしまうため、むやみに圧力を上げることはできない。しかしディーゼルエンジンでは最終圧縮比は高いほうが燃焼が円滑に進むため、構造上、ターボやスーパーチャージャーによる過給に適しているのだ。
しかしターボで空気を圧縮すると、空気温度が上がってしまう。空気温度が上がると空気密度が下がり、酸素量不足になるという現象が起きる。それを防ぐために装着されるのがインタークーラー。インタークーラーによって吸入空気温度を下げることで、充填効率を向上させ、よりトルクアップを実現している。
■排ガス清浄化のためのシステムの1つである尿素SCR機構と、DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)。排ガス中に尿素を噴射することで、化学反応によってNoxを除去。
■当初ガソリンモデルのみが日本に導入されたメルセデス・ベンツAクラスだが、シリーズ途中でディーゼルモデルを追加
参考情報 ここもチェック!
石油元売りの努力も非常に大切だった
ディーゼルエンジンのクリーン化はエンジンを製造している自動車メーカー側だけの努力ではなしえなかった。もちろん、さまざまなパーツを製造しているサプライヤーの協力はなくてはならないものだったが、それ以上に重要な役割を果たしたのが、石油元売りメーカーの努力による、燃料の改質。どんなに素晴らしい装置があっても、燃料そのものの質が悪ければ、クリーンなディーゼルエンジンはできなった。軽油に含まれる硫黄分を見てみると日本の場合、1953~1976年までは1万2000ppm、1976~1992年が5000ppmといった具合に段階的に削減。2005年からわずか10ppmに減っている。つまり1976年までの1200分の1。関係するさまざまな企業が努力をしたことで、現在のクリーンなディーゼルが存在しているというわけだ。
例題/DCTはどこに使われる装置か?
①エンジン ②サスペンション ③ミッション ④エアコン(正解=③)