【ディーゼルエンジン②】なぜ欧州ではディーゼルが人気なのか?・ディーゼルとターボは相性バッチリ

なぜ欧州ではディーゼルが人気なのか?

クリーンディーゼルを搭載している日本車はマツダCX-5など数えるほどでしかない。しかしヨーロッパでは昔からディーゼルエンジンこそが主流で、最近は日本市場向けとしてもメルセデス・ベンツのBlue TECやBMWのBlue Performanceなど、さまざまなクリーンディーゼル搭載モデルが正規輸入されている。
ちなみに20世紀初頭のフランスでは走っているクルマの約7割はディーゼルで、高級SUVであるBMW X5も、ヨーロッパ主要国における販売比率はディーゼルエンジン搭載車が9割以上を占めていた。
なぜ、ヨーロッパでここまでディーゼル車の人気が高かったかといえば、やはり大きいのは「経済的である」という点。
といっても、ヨーロッパでもディーゼルエンジン搭載モデルは、ガソリンエンジン仕様よりも車両価格が高い場合が多い。しかし自動車税や燃料価格、燃費、走行距離などを総合的に考えたとき、ディーゼル車のほうが得になるケースが多いのだ。
しかし、欧州での排ガス規制が厳しくなり、ディーゼル車は激減。2018年のフランスでの比率は約40%まで低下。今後は電動化に向かっていくという見方が強いが、新たなディーゼルエンジン開発も続いていて、今後の見通しがはっきりしないのもまた事実である。


2020年に発表されたBMWの直列6気筒ディーゼルエンジン。48Vの直流バッテリーと組み合わしてハイブリッドとして使われる


こちらはマツダのディーゼルターボモデル、CX-5。ガソリン仕様もあるが、ディーゼルターボも高い人気を得ている

ディーゼルとターボは相性バッチリ

上記のマツダCX-5にしてもBMWのBluePerformanceにしても、採用しているディーゼルエンジンはただのディーゼルではなく、過給機とコモンレール式直噴技術を組み合わせた「直噴ディーゼルターボ」である。
ディーゼルエンジンというのは、ガソリンエンジン以上にターボとの相性が良い。ガソリンエンジンは最終圧縮比(過給圧×圧縮比)を上げすぎると点火プラグで点火する前に自然着火してしまい、異常燃焼の原因になってしまうため、むやみに圧力を上げることはできない。しかしディーゼルエンジンでは最終圧縮比は高いほうが燃焼が円滑に進むため、構造上、ターボやスーパーチャージャーによる過給に適しているのだ。
しかしターボで空気を圧縮すると、空気温度が上がってしまう。空気温度が上がると空気密度が下がり、酸素量不足になるという現象が起きる。それを防ぐために装着されるのがインタークーラー。インタークーラーによって吸入空気温度を下げることで、充填効率を向上させ、よりトルクアップを実現している。


排ガス清浄化のためのシステムの1つである尿素SCR機構と、DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)。排ガス中に尿素を噴射することで、化学反応によってNoxを除去。


当初ガソリンモデルのみが日本に導入されたメルセデス・ベンツAクラスだが、シリーズ途中でディーゼルモデルを追加

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石油元売りの努力も非常に大切だった

ディーゼルエンジンのクリーン化はエンジンを製造している自動車メーカー側だけの努力ではなしえなかった。もちろん、さまざまなパーツを製造しているサプライヤーの協力はなくてはならないものだったが、それ以上に重要な役割を果たしたのが、石油元売りメーカーの努力による、燃料の改質。どんなに素晴らしい装置があっても、燃料そのものの質が悪ければ、クリーンなディーゼルエンジンはできなった。軽油に含まれる硫黄分を見てみると日本の場合、1953~1976年までは1万2000ppm、1976~1992年が5000ppmといった具合に段階的に削減。2005年からわずか10ppmに減っている。つまり1976年までの1200分の1。関係するさまざまな企業が努力をしたことで、現在のクリーンなディーゼルが存在しているというわけだ。

写真はBMW車に搭載されている「Diesel particulate filter」。エンジン本体、補器類、そして燃料。さまざまな分野が協力することによって、現在のクリーンなディーゼルが実現された


クルマ豆知識
名スポーツエンジン列伝/「3S-GE」(トヨタ、直4) セリカなどに搭載された2ℓ級スポーツエンジン。特に頑丈さには定評があり、ターボがWRC、グループC、GT選手権、NAがF3に使われていた


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