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【豆知識】マイナーチェンジで後期型に!トヨタ86ってそもそもどんなクルマ?

2016年7月5日、トヨタは「86(ハチロク)」をマイナーチェンジし8月1日から発売することを、富士スピードウェイで発表しました。マイナーチェンジで大々的な発表会を行うことはめずらしく、しかも開催場所は富士スピードウェイ。トヨタにとって、大切なクルマであることがわかります。

クルマ好きな方なら、一度はハチロクの名を耳にしたことがあると思いますが、発売からすでに4年。若い方の中には、このクルマについて詳しくない方もいるのではないでしょうか?

そこで今回は、トヨタ86がどんなクルマであるのかを、改めて見てみたいと思います。

スバルとの共同開発で生まれたFRスポーツ

86は、2012年2月に発表、4月に発売された、トヨタのFRスポーツカー。ドライバーの感覚ひとつでいかようにも取り回せる「手の内感」や操る楽しさを体感できる、「直感ハンドリングFR」をコンセプトに開発されたこのクルマは、スバルとの共同開発で生まれました。

トヨタがスバルと小型FRスポーツカーの共同開発を行うことが発表されたのが、2008年のこと。2009年の東京モーターショーでは、早くもコンセプトカー「FT-86」を発表し、のちの86になるデザインとコンセプトの一端を見せてくれました。86(ハチロク)の名は、もちろん漫画「頭文字D」にも登場したカローラ・レビン/スプリンター・トレノ(AE86型)にちなんだもの。

86の開発を指揮したのは、多田哲哉CE(チーフエンジニア)。多田氏は、従来トヨタで行われていた開発プロセスではいいものが作れないと社内表彰制度を変えるなど、破天荒とも言える活躍で理想のスポーツカーを追求。企画やデザインをトヨタが、設計・生産をスバルが担当し、2012年にトヨタ86、スバルBRZとして発売されました。86のカラーバリエーションが他のトヨタ車と違うのは、スバルの工場で生産されるためです。

86とBRZの違いは、フロント周りのデザインとサスペンションのチューニング、グレード構成と細かな装備の設定の違いのみで、基本的なスタイリングやメカニズムは共通。多田哲哉CEはあるとき、「当初はフロントのデザインも変えないつもりだった」と語っていました。

マイナーチェンジでは「走りの深化」が目的とされた

7月5日に発表されたマイナーチェンジ版では、「走りの深化」が目的とされました。空力特性向上も考えてフロント周りを中心にデザインを変更。内装の素材や装備も見直され、質感と使い勝手が向上しました。また、同日、BRZも86と同様のマイナーチェンジを発表しています。

86/BRZともに200馬力だった水平対向4気筒2.0Lエンジンが、6速MT車に限って207馬力へアップしたこともマイナーチェンジの大きなポイントでしょう。また、リアピラー周りのスポット打点増し打ちによるボディ合成の強化や、サスペンションのファインチューニングも行われています。

カスタマイズやユーザーコミュニティなど購入後の楽しみも提供

86は、ただ単にクルマ(ハードウェア)を販売するだけでなく、購入後の楽しみ(ソフトウェア)も同時に提供しようという、新しい試みが採用されました。

ひとつ目は、積極的なカスタマイズ推進。「86はベースとなる素材。自分好みにカスタマイズしてほしい」と、従来の自動車メーカーには見られなかった姿勢を示しました。

もうひとつは、コミュニティサイトの運営。86のデビュー当初より「86SOCIETY」というFacebookと連動したコミュニティサイトをトヨタ自動車で運営し、オーナー同士の情報交換やオフ会告知などができる場を提供しています。また、メーカー自ら「86S(ハチロックス)」というイベントも開催してきました。86SOCIETYでは、今もオーナー同士でさまざまな形の86S(オフ会)が開催されています。

86/BRZだけのワンメイクレースも開催する

86のデビュー翌年となる2013年からは、86とBRZだけで行われる「TOYOTA GAZOO Racing 86/BRZ Race」を実施。同一スペックの車両で戦われるワンメイクレースは、レース初心者でも参戦しやすい反面、ドライバーの腕とチーム力が試されるレースでもあります。

2015年シーズンからは、アマチュアドライバーが参戦するクラブマンクラスとスーパーGTなど国内最高峰レースに参戦するプロドライバーで戦われるプロフェッショナルクラスの2クラス制に。

6月に行われた2016年シーズン第4線富士スピードウェイでは、クラブマン/プロフェッショナルと合わせて、過去最高となる124台ものエントラントが集まり、盛り上がりを見せています。

発売から4年。中古車の価格も気になるところ

86は、ただのFRスポーツではなく、「スポーツカー文化をもう一度、盛り上げたい」という思いが込められたクルマです。多田哲哉CEは発売当初より、「数年たって、手頃な価格の中古車が出回るようになってからが本当の86の時代」という発言をしていました。

マイナーチェンジが実施されると、乗り換え需要などによって中古車が多く出回るもの。今ようやく、トヨタと多田CEが描く「スポーツカー文化」の基盤が整ったところなのかもしれません。

text by 木谷宗義/Bucket